日本動物実験代替法学会第37回大会
大会長 坂口 斉
花王株式会社 安全性科学研究所長
この度、日本動物実験代替法学会第37回大会を2024年11月29日(金)~12月1日(日)の3日間に、ライトキューブ宇都宮にて開催することとなりました。
一般社団法人⽇本動物実験代替法学会は動物実験の適切な施⾏の国際原則である3Rs(Reduction:動物数の削減、Refinement:動物に対する苦痛軽減、Replacement:動物を⽤いない代替法への置換)の推進と普及を⽬的とし、研究、開発、教育、調査等を⾏う学術団体です。この3Rsの原則は、近年の実験動物福祉に関係する各国の法律や指針だけでなく国際標準や国際指針にも採⽤されています。これに則する形でEUにおいては2013年に化粧品開発における動物実験が禁⽌され、米国でも2019年に⽶国環境保護庁が⻑期的に動物実験を削減することを発表するなど、動物実験の規制が進むなかで動物実験代替法(以下、代替法)の必要性と重要性は⾼まっています。それに伴い、代替法に関する研究も世界的に盛んになっており、産官学による⼤型の研究プロジェクトが国内外でいくつも実施されています。また、2023年にはAnimal Free な化粧品の安全性評価を研究開発し、教育を行い、行政利用を目指す国際的な非営利団体であるInternational Collaboration on Cosmetics Safety(ICCS)が設立されました。これらの研究プロジェクトでは、様々な領域の研究者による協働が⾰新的な技術の開発に繋がっています。このような状況において、3Rsの推進並びに代替法の開発と普及に本学会が果たす役割は、ますます⼤きくなっていくと思われます。
ご存知のように、これまでに眼や皮膚などの局所刺激性や皮膚感作性等の代替法がOECDテストガイドラインや厚生労働省から発出される医薬部外品・化粧品の安全性評価におけるガイダンスとして収載されています。一方で全身毒性の代替法開発は十分とは言えず、まさにこれから取り組むべき大きな課題の一つです。この課題に対し新たなアプローチのNew Generation Risk Assessment(NGRA)が提案され、Read Acrossやin silicoさらにはゼブラフィッシュ胚などこれまで主流であった細胞を用いた試験とは違ったアプローチも検討されています。さらに体内動態予測や体内曝露予測、標的臓器特異的な毒性予測は、生体模倣システム(MPS)や数理モデルを用いた研究が進められています。本大会はこのような様々な代替法が一堂に会して議論できる学術大会であることから、最新の研究成果を発表する場としてだけでなくその代替法の活用に関して議論する場としても大きな役割を持つと考えています。
COVID-19以降、学術大会の開催方法は変化しています。そこで本大会では、オンサイト開催での議論はもちろんですが、一部の演題はオンラインでの発信も予定しています。また、本大会のテーマは「動物実験代替法の新たな潮流と社会実装への取り組み」としました。本学会員だけでなく様々な研究領域の方々にもぜひともご参加いただき、代替法に対するサイエンスの観点だけでなく、日本で、世界で、より活用されるための『実装化』の観点からも、ぜひ活発に議論していただければと思います。
宇都宮では、2023年に宇都宮ライトレールが開業し、宇都宮駅を中心に新たな公共交通ネットワークが形成されました。本大会は、その宇都宮駅に直結する交流施設として建設されたライトキューブ宇都宮で開催いたします。懇親会では宇都宮名物のご提供も予定しておりますので、多くの方々にご参加いただきぜひ交流を深めていただければと考えています。皆様に、宇都宮の地にてお会いできることをとても楽しみにしております。
2023年12月吉日